2014年4月17日「『B・A・M・Y3』千秋楽」

 

BAMY自体は前作からで、2度目の参戦!

叶うのなら初日も行きたかった。千秋楽を見た後、さらにその気持ちを痛感しました。

もう一度見たい…!!

 

具象劇だけど音響と照明をふんだんに活用してて、情緒的な効果を抜群に発揮していました。

どちらもフェードイン・フェードアウト/カットイン・カットアウトの使い分けが、舞台効果の教科書のようで美しかったです。

特に役者をシーリングなしのバックサスで貫いて、視線をそこだけに集めた上で音響も煽るところは、心が痛むレベルで魅せられました。

 

 

キャスティング

守谷さん:ガンちゃん。喫茶店のマスター。

山名さん:ラリー山名。小説家で喫茶店の常連客。

秋山さん:秋山。高校生。お金持ちのぼんぼん。川崎のことを親友と呼ぶ。

バイクさん:川崎。高校生。実家が貧乏なため小学生のころからアルバイトをしている。

 

 

きちんと順序立てたストーリー説明は出来ないのですが、概要は以下のような感じです。

 

 

ガンちゃんが経営する喫茶店で新作の小説を執筆しているラリー山名。

しかし全く進んでいる様子はなく、ガンちゃんに茶々を入れられると逆切れして返す。

どうやら昔馴染みの仲らしく、憎まれ口の中にも仲の良さがにじみ出ている。

 

そこにやってきたのは高校生2人組、秋山と川崎。

山名が小説家のラリー山名であることに川崎が気づき、秋山が声をかけたのをきっかけに、ガンちゃん・ラリー・秋山・川崎は全員顔見知りとなり、日曜日にラリーの新作小説のテーマを持ち寄る運びとなる。

 

 

…これがプロローグです。

ここから先は正確な順序が思い出せないので、各々のエピソードについてぶつ切りで書いていきます。

実際はこれらが混ざり合ってストーリーが展開されていきます。

 

 

「ガンちゃん」というあだ名はその病気・ガンが由来である。しかし本人のその口調にネガティブな感情は一切ない。余生を楽しもうと前向きに生きているよう。

「“ガンの“ガンちゃん」として扱われることに嫌気が差していたガンちゃんにとってラリーは、唯一自分を一人の人間・ガンちゃんとして扱ってくれる存在だという。

検査の結果、末期のガンであったことをラリーに告白した際に、彼は笑い飛ばし、揚句の果てにこってり重いカツ丼を出前で取ろうとした。そんなラリーの行動が、ガンちゃんにとってはうれしかったそう。

 

場面は変わって、ラリー自身が回想に浸っている。それはガンちゃんから末期のガンだということを伝えられたときの記憶。

ガンちゃんが語っていたように笑い飛ばし、出前でカツ丼を注文しようとするラリー。

ガンちゃんはゴミ捨てのため、店から出て行く。

 

ラリーは喫茶店から注文の電話を掛ける。

その日のカツ丼は終了したと聞いたラリーは「約束したんです」と言い、何が何でもカツ丼を用意するよう強く固い口調で注文を続ける。

―――ガンに打ち“勝つ”ための“カツ”丼。どんなに時間がかかってもいい、約束をしたから、だから絶対に用意して欲しい。

以前からガンちゃんに「ガンちゃうん?ガンちゃうん?」と面白半分で言っていたラリーは、自分のせいでガンちゃんが実際のガンになったのではと責任を感じていたのだった。

「言霊ってあるんですね」

抑えきれず吐露された言葉には、後悔・責任・悲しみ・苦しみ・心配、ここまでラリーが人前で一切見せてこなかった感情が詰まっていた。

 

一方、高校生の川崎。

彼は小学生のころから家のために新聞配達などのバイトをしていた。そのときに触れた見ず知らずの人たちからの優しさに何度も心が救われたという。

川崎が配達先の人からの優しさについて語っていると、涙を流し始める秋山。

そこまで泣く必要がないだろうというガンちゃん・ラリーに秋山は、川崎は昔から苦労をしている、かわいそうだ、コイツはすごいと力説をする。

しかし川崎にそんなつもりはなく、秋山が持つ川崎へのイメージに、自分自身の感覚とのギャップを感じ疑問を抱いているようであった。

 

金持ちの息子である秋山は高校生にしては質良い財布を持ち歩き、その中にはいつも札が入っていた。

自らをぼんぼんと語る口調に嫌味などは一切なく、自慢げにひけらかすような態度でもない。

親友・川崎のことを思い、「川崎は頑張ってるから」と常日頃から自ら進んでコーヒーを奢るなどしていた。

 

ある日ガンちゃんとラリーは、秋山の財布を隠すドッキリを仕掛けようと、川崎に持ちかける。

戸惑いながらも、二人の指示通り財布を尻に敷く川崎。

駐輪場から戻った秋山が財布がないことに気づき慌て始めると、ガンちゃんとラリーは「川崎が隠した」と告げる。

実際は川崎をドッキリにハメるつもりだったらしい。

些細なドッキリで高校生をハメたガンちゃんとラリーの二人が笑っていると、秋山は川崎に「お前がこんなことしたらホンマにお金に困ってるんかって心配になる」と言い放つ。

もちろん秋山に悪気はなく、むしろ川崎の力になりたいと言葉を続ける秋山だったが、その言葉に川崎は戸惑いを隠せないでいた。

その後秋山は、店内に傘を忘れたまま先に店を出て行く。その傘を届けるようガンちゃんから預かった川崎であったが、長い葛藤の末、その傘を店の傘立てへ投げ入れて川崎は店を後にしてしまった。

 

後日。ガンちゃんと秋山がゴミ捨てに行ったことで空き状態になった店に、川崎がひとりでやってくる。

テーブルの上には秋山の財布。

川崎は恐る恐る財布に手をのばして中のお札を抜き取ると、再び長い葛藤を経て、それらをゴミ箱の中へ放ってしまう。

札がゴミ箱へ消えていくのとほぼ同じタイミングで、ラリーが来店。その後、ガンちゃんと秋山も店に戻ってくる。

 

しばらくして、コーヒー代を払おうと財布を開いた秋山がその異変に気付く。うつむいたままの川崎。

「さっきゴミ箱の前で財布握って立ってた」とラリーが犯人は川崎であることを口にすると、秋山は「またドッキリか」と笑う。

しかしラリーは川崎に「謝れ」と強く言い放つ。やっていいことと悪いことがあると。

ラリーの言葉を受けて川崎は謝罪の言葉を述べる。ただしお札の件ではなく、先日秋山の傘をわざと店に置いていったことを。

訳が分からない秋山たちに、川崎は正直な心の内を強い口調で続ける。

―――少しでも秋山が困ればいいと思ってしまった、俺の全部を見てるって言ってくれるけれど見すぎだ、お前は優しすぎる、同情しているだけだ、親友なんかじゃない――

 

その時、ガンちゃんが苦痛を訴え倒れる。

すぐに寄り添い必死で声をかけるラリーの姿に、川崎は”以前そうしたように笑い飛ばさないのか”と苛立ちの質問を投げかける。

「そんなこと言ってる場合か!!」と怒りで声を荒げるラリーの言葉を受けて、川崎は店から出て行ってしまう。

追いかけるべきか否か迷いを見せる秋山に、ラリーは行けと言い放ち、秋山は川崎を追って外へ。

残されたラリーの耳に入ってくるのは、ガンちゃんをあちらの世界に招く声。

「絶対行かせへんからな」とするどい眼光で空(くう)を見つめるラリーだった。

 

数日後。

「あれ、開いてる」

誰もいない喫茶店にやってきた秋山。しばらくすると川崎も店へ入ってくる。

改めて川崎に頭を下げる秋山。

川崎を傷つけないように言葉を選びながら、それでも上手く言えず何度も訂正を繰り返しながら、なんとか自分の気持ちを理解して欲しくて一生懸命に秋山は思いを述べる。

何度も言い直す中で“貧乏“という言葉を連発してしまう秋山の姿に、川崎は「じゃあコーヒー奢れよ」と笑顔で答え、二人は仲直りをした。

 

そこに雑巾を持って現れたラリーは、ガンちゃんはどうしたのかという質問に「ああ、うん」上の空で返事をする。

ガンちゃんが言っていた通りの手順でイスのシミを擦りはじめるラリーだが、一向にとれる気配のないそのシミに、雑巾を握るラリーの手にどんどん苛立ちが募っていく。

「ぜんっぜん取れへんやんけ!!!!!」その場に泣き崩れるラリー。

秋山と川崎は、ガンちゃんの死を悟り肩を落とす。

 

…そこに現れたのはガンちゃん。死んでいなかった模様。

ラリーは単純に、自分のお気に入りのイスのシミが取れないことが許せなかったそう。

なんとか落ち着きを取り戻したメンバーに、ラリーは新作小説が完成したことを報告。

「すいません、コーヒー3つ」「苦いわ~」うれしそうなガンちゃん。

 

スクリーンでのエンドロール後、再び明転する舞台。

小説家ラリー山名は自前のPCを閉じるとマスターにコーヒー代を払い、隣の席の男子高校生2人組に静かな笑顔で声をかける。

「いいアイディアが浮かびました」

戸惑う高校生2人を尻目に、店を後にする小説家ラリー山名。

「…知り合い?」「知らん」

 

――全てはラリー山名の新作のお話しでしたとさ。

 

 

 

カーテンコールで舞台が明るくなって4人が顔を上げても、しばらく鳴り止まなかった拍手が思い出深いです。

いつまででも拍手をしていたくなる、いくら拍手をしても足りない、それくらい感情が高ぶっていました。

 

誰が主人公であるかが重要なのではなく、ひとりひとりがハンデや優しさを抱えていて、それらが僅かに反応しあっているような、繊細なお話。

誰も悪意を持ちえず、優しさだけが機能しあっているはずなのに、生じてしまう心の擦れ違いが切なかったです。

相手がその大きさに困るほどの愛情を容赦なく送る人もいれば、自分の本心を隠してさりげなく愛情を与え続ける人もいる。

 

脚本の山名さんご自身が、ものすごく繊細で、感受性豊かな方なのだろうと思いました。

感受性が豊かだからこそ、演技では、沈黙の中でとてつもないパワーを発揮することが出来る人でもあります。

物語の中盤、出前を取るシーン。舞台上は、山名さんたったひとりに光が当たり、音響もなにもない静かな空間。その空間で、早口で捲し立てることなく、淡々とした口調で心の内を吐露する姿が、あまりにも切なくて眩暈を覚えました。

 

ぽやっとしていてのんびりなイメージの山名さんに対して今までは演技派な印象がなく、なぜ演劇集団であるギャーギャーギャーのメンバーにも入っているのかずっと疑問だったのですが、今回の舞台を通してなんとなく理解した気がします。

素朴・純朴なのに、ふとした瞬間にちくりと切れ味をチラつかせる、そんな印象です。

ちらり、じゃないです。ちくり。

 

前述したカツ丼のシーンもそうですが、イスのシミを取ろうと躍起になるシーン。

雑巾を握る手に徐々に力がこもって演技が加速していき、最後には収拾がつかなくなって爆発する様が、脳にどかんどかん衝撃を与えてきて辛かったです。

からの「…死んだちゃうんかい!!!」笑

 

他にお伝えしたいのは、冒頭でも書いたように音響照明の情緒的効果!

特に心を魅かれたのは、

・カツ丼の出前を取る中で、ラリーさんが心情を吐露するシーン

・川崎くんが秋山くんの傘を傘立て投げ入れるシーン

・川崎くんが秋山くんのお金をゴミ箱へ放るのに葛藤をしているシーン

この3つ。

 

中でも川崎くんを演じるバイクさんは、本来の芸風とは真逆なネガティブな感情がすごく映える人で、上記の2つのシーンがばっちりハマっていました。

細見な体型も相まって、サスで貫かれて出来るシルエットが今にも壊れてしまいそうなくらい痛々しい印象で。

華奢な外見と決壊しそうな川崎くんの心がリンクしあっていて、それを照明が際立たせていました。

 

そしてそこから川崎くんの思いが決壊するシーン。

普段からバイクさんは漫談で大きな声を出していますが、そういった盛り上げるための発声とは違う、あの華奢な身体から発する心からの叫び声は見ていて苦しくなります。

いい意味で。本当にハマり役。

ブラックなオチのコントも披露されると聞いたので、その点で非常に興味を惹かれています。怖いコントにネガティブな表情は付き物ですからね。

 

全体を通して山名さんの演出は、葛藤は沈黙で、仲の良さは言葉がぽんぽん飛び出すテンポで表現することを基本にしてるなと思いました。

それを軸にそれぞれの演技を組み立てていくというか。

 

アキナの漫才でよく見られる、短い単語を順に言い合うノリがこの舞台でもあって、守谷さんを3人がかりでイジるシーンで、アキナの二人にバイクさんが頑張ってついて行っている姿が可愛らしかったです。笑

 

その山名さんの作りたいテンポに確実に答えているのが、やはり相方の秋山さん。

前作のオカマ役も相当に面白かった記憶がありますが、秋山さんの本質を活かしきれているのは今作だと思います。

制止を促したりといった、いわゆるつっこみ台詞がやはりこのメンバーの中でピカイチです。

日頃からツッコミであるからかもしれないですが、スバッと遮るフレーズを言って笑いが起きるのはやはりキレがないと出来ない技なので、改めてツッコミ上手いなあと思いました。

特にガンちゃんが、ガンちゃんの中にいるもう一人のガンちゃんの話を始めようとするたびにするどく「やめろぉ!」というのが面白かったです。

少し精神年齢の未熟で真っ直ぐな青年役が似合います、秋山さんは。

もっと虐げられるような役も見てみたい…

 

演技派ゴリラの異名を持つ守谷さん。笑

モーションに余裕があって素直に上手いなあと思いました。

ただテクニック的にうまいというか…情緒の記憶や想像力ももっと駆使したら、現状にはない、とんでもない熱量のお芝居になりそうな気がします。

演出家さん次第といった感じでしょうか。

今回の舞台の中では最もプラスの感情が多いキャラクターだったので、もしかしたら反対のキャラクターになると熱量が増すのかなあ、とか考えてます。なにか特別な理由で悪になるしかなかった、そういう役が似合いそうです。

 

そうそう!本番中にやらかした守谷さん!!

川崎くんと秋山くんの関係性について大事な部分に入ろうとしてる場面で、ガンちゃんの声が裏返ったまま戻らない事態が発生。

予想外の出来事に笑いをこらえきれない役者陣と、大爆笑の客席。

秋山さんに至っては顔を両手で覆っていましたww

 

 

芝居全体の完成度、掛け合いは前回より格段にレベルが上がっていたと思います。

前回は全員がセリフを互いに探り合い思い出しながら芝居が進んでいたような記憶が。

 

ちなみに前回のBAMY2は、プリマ旦那・野村さんしか知らない状態での観劇でした。

なんなら幕が開いて数分間は野村さんと守谷さんの見分けがついていない、そんな程度の知識。笑

 

現在バイクさんの東京進出が決まっているということでB.A.M.Yが今後どうなっていくのか気になっていたのですが、昨夜ツイッターで「続ける方向ブン」と発言していたのでとてもうれしかったです。

 

…同時に、関連のある別の事柄について詳細に知りたくなりましたが。

 

まあそれはアキナの漫才単独行ってみないと分からないことですよね、きっと。うん。

 

とりあえずチケット買った。

 

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閉幕後入口で配布されたフライヤー。

衣装が全員ポロシャツをベースにしててかわいいなあと思いました。

 

 

 

本当に心が温まった舞台でした。

 

心を掴むところは“えぐい”“痛い”と感じるくらい鷲掴みにしてくる、お芝居にメリハリの利いたすばらしい演出だったと思います。

 

山名さんのイメージが変わりました。モテるくんでやってた男気には程遠い人なんじゃ…笑

 

 

次の演劇イベントはおそらくギャーギャーギャーのつみぎ再演。

 

これがギャーギャーギャー初参戦となるので、緊張もありつつ非常に楽しみです。